会社が従業員に知らせずに事業譲渡をしたために知らない間に所属会社が変更されていた従業員について,訴訟手続によって新たな所属会社から事業譲渡前の残業代を回収した事例
2021.12.03
事案概要
- 依頼者は,北海道内の企業に数年間勤めていたが,長時間労働に対して残業代の支給はなく,サービス残業が続いたことで退職を考えるようになっていた。そうしたところ,社長から「会社の名前が変わることになった」と聞かされ,会社の名前が変わった後もそれまでと全く変わらない勤務環境で数か月間勤務を続けたが,最終的に依頼者は勤務先を退職した。
その後,依頼者が残業代の支払を求めるために当事務所に相談し,当事務所において勤務先会社の情報を確認したところ,元々勤務していたはずの会社が実は数ヶ月前に解散しており,最後の数か月間は元々の会社とは別に新しく設立された会社に所属して仕事をしていることになっていたことが判明した。
解決結果
受任後,直ちに勤務先会社に通知書を発送し,事情の説明を求めたが,会社からは特段の返答が得られなかった。そこで,新会社に対して残業代に支払を求める訴訟を提起し,元々の会社で働いていた分の残業代の支払義務を新会社が引き継いでいることを複数の法的根拠に基づいて主張した(債務引受けの黙示的合意,法人格の否認,事業譲渡における商号続用会社の責任,詐害的事業譲渡など)。
会社は残業代の支払義務を引き継いでいることを否定し,様々な争点があったことから訴訟は長期化したが,最終的には新会社が残業代の支払義務を引き継いでいることを前提にした訴訟上の和解が成立し,残業代を回収することができた。