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自己の所有する建物内の設備が壊れていたことにより,利用者に損害が生じた場合の建物所有者の責任

企業法務一般、顧問契約

先日,当社が所有・管理している建物の階段の手すりが一部壊れており,金属の尖った部分が露出していたため,利用客がその部分に衣服を引っ掛けてしまい,破れるという事故がありました。
たまたま,目撃していた利用客からの通報があり,利用客の一部の人がふざけて無理に体重をかけたため,破損させてしまい,それを知らずにその直後に手すりの近くを通っていた利用客が被害を受けたことが判明しました。
悪いのは当然手すりを壊した利用客だとは思うのですが,当社の施設ということで工作物責任を負うことがあると聞き,心配になり相談しました。
今回は衣服だったのでお詫びとして小さな金額をお支払いして事なきを得ましたが,もしこれが大怪我につながっていた場合には,高額の損害賠償について当社がその責任を負うことになってしまうのでしょうか。

相談のあった工作物責任というのは,民法717条に定めのある,土地の工作物責任のことを指しているものと思われます。
同条1項では,「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは,その工作物の占有者は,被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし,占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定されています。本件では,会社が管理(占有)も所有もしていることから,占有者としても所有者としても問題となります。しかし,損害賠償責任を負うか否かについては以下の点について検討する必要があります。
まず「土地の工作物」には建物が入りますし,階段も建物の一部ですので,「土地の工作物」にあたります。
ただし,責任を負わなければならないのは,「設置又は保存に瑕疵がある」場合に限られます。本件では,設置(建築)の段階では破損しておらず,第三者によって破損させられたため,建物の「保存」に瑕疵があるかが問題となります。
瑕疵とは,「当該工作物が通常備えているべき品質・性能(安全性)を欠いていること」とされています。本件において,金属部分が露出していることは瑕疵に当たりそうですが,利用客によって損壊させられており,その直後に被害が生じたわけなので,会社で対応するのが不可能ともいえます。
この点については,判例があり,「その事故当時における当該工作物又は営造物の構造,用法,場所的環境,利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである。」という判断基準があるほか,夜間の公道で直前に通過した車により工事の看板が倒れ,赤色灯が消えた状態で,その後通過した車が事故にあった事案において,要旨,道路の安全性は欠如していたが,夜間,事故直前に先行した他車によって惹起されたものであり,時間的に被上告人(国)において遅滞なくこれを原状に復し道路を安全良好な状態に保つことは不可能として,道路管理に瑕疵がないとした最高裁事例もあります。
そのような裁判所の判断状況からすると,本件では破損が生じてすぐの被害なので,会社がすぐさまこれに気が付き適切な対応をすることは現実的に難しいことから,「瑕疵」が認められない可能性が高いといえます。
しかし,もし仮に,施設の破損に数日間気が付かなかった,あるいは,通報があったにもかかわらずすぐに対応しなかった場合に被害が生じたということになると,「瑕疵」が認められる可能性が高まります。
また,今回は工作物責任が心配になったということでご相談いただきましたが,建物所有者の建物利用者に対する安全配慮義務違反があるとして,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や,入場料・利用料を取る施設の場合には,施設の利用契約に付随する安全配慮義務を怠ったとして,債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)として請求を受けることも考えられます。請求の方法によって,請求する側の立証責任や,請求できる期間(消滅時効)等,細かい部分で違いが生じてきますが,いずれの場合であっても,現実にどこまで建物管理者側が対応できる事案だったのか,また,対応すべき事案だったのかということを個別に判断されることになるため,考慮される要素としては,工作物責任の場合とほぼ同じになると考えられます。
このように,事案により会社が責任を負うか否か判断が分かれることから,工作物に関して第三者に被害が生じた場合には,弁護士に相談の上対応するのが望ましいといえます。

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