交通事故加害者が個人再生手続中に損害賠償請求を受けたものの無事に解決した事例
2021.03.23
事案概要
- 依頼人は,事業経営がうまくいかず多重債務に陥り,支払いが困難になり,当事務所に個人再生の申立を依頼した。当事務所において,個人再生の申立てをした。
ところが,再生計画の認可目前で,依頼人は,個人再生前に起こした交通事故の損害賠償請求の通知を受け取った。依頼人は,この事故については責任がないと思っていたので,当事務所にその存在及び内容を全く知らせていなかった。
当事務所において,裁判所に対し,交通事故の損害賠償金を支払うとしても,個人再生の履行可能性がなお認められることを説明した。結果的に,これが裁判所に認められて,債務が大幅に減額されて分割払いで支払う内容の再生計画の認可を得た。
その後,依頼人はこの交通事故について損害賠償請求訴訟を提起された。その交通事故の内容は,自動二輪車運転中の原告が,前方に駐車するため右転Uターンしようとした依頼人の四輪車両と衝突し,車両及び人身損害が生じたというものであり,依頼人が,右転転回時,後方を注視していたかどうか,また,右ウインカーを点灯させていたかどうかが争点であった。
ここで実際に重要な問題は,依頼人が,事故当時,前妻の家族限定の保険のままにしており任意保険の適用がなかったので,訴訟で認定される損害賠償額がすべて自己負担になることであった。
解決結果
訴訟については,双方の主張が平行線をたどったので,双方運転者の尋問が行われた。尋問の結果,裁判所の心証は,後方不注視,右折ウィンカー忘れという,依頼人に不利なものであったが,和解交渉に持ち込み,事実認定の逆転可能性,損害額の根拠が十分ではないこと,当方依頼人が個人再生中であるから個人再生計画に従った減額がここでも適用されることなどを主張し,原告の請求額の4分の1程度の金額を月2万円で7年払いとすることで合意することができた。
その後依頼人は,個人再生,交通事故訴訟いずれについても予定どおり支払を続け,途中収入が増えたこともあって,予定の半分程度の期間で,すべて支払を完了した。